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神戸地方裁判所 平成8年(わ)35号 判決

裁判所書記官

宮辻純夫

本店の所在地

大阪府東大阪市西鴻池町三丁目一番三八号

又永化工株式会社

(右代表者代表取締役 安西將)

本籍

大阪府東大阪市鴻池町一丁目七六六番地の八四

住居

兵庫県宝塚市雲雀丘三丁目二番一三号

会社役員

堀江光平

昭和一七年一〇月一〇日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官山根薫、弁護人(私撰)細谷明、豊島時夫各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人又永化工株式会社を罰金四、〇〇〇万円に、被告人堀江光平を懲役一年六月にそれぞれ処する。

被告人堀江光平に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人又永化工株式会社は、大阪府東大阪市西鴻池町三丁目一番三八号(平成七年七月二五日以前は、東京都港区新橋二丁目二〇番一五号新橋駅前ビル五階)に本店を置き、ビニール製品製造加工並びに販売業等を営むもの、同堀江光江は、被告人会社の取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、同会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、

第一  平成二年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において、その所得金額が二億六、五九七万六、〇七八円で、これに対する法人税額が一億三二二万六、六〇〇円であるにもかかわらず、架空の仕入れを計上するなどの行為により、その所得の一部を秘匿した上、平成三年二月二八日、東京都港区芝五丁目八番一号所在の所轄芝税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が七、五九五万三、五八六円で、これに対する法人税額が二、七二一万七、四〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、法人税七、六〇〇万九、二〇〇円を免れ

第二  平成三年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において、その所得金額が一億四、四五四万二、八五五円でこれに対する法人税額が五、一九八万三、三〇〇円であるにもかかわらず、前同様の不正の行為により、その所得の一部を秘匿した上、平成四年三月二日、前記芝税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が四、一二一万四、一五八円で、これに対する法人税額が一、三二三万五、三〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、法人税三、八七四万八、〇〇〇円を免れ

第三  平成四年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において、その所得金額が九、二二一万四、〇二一円でこれに対する法人税額が三、一八六万一、六〇〇円であるにもかかわらず、前同様の不正の行為により、その所得の一部を秘匿した上、平成五年三月一日、前記芝税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が四、一四〇万六、五七一円で、これに対する法人税額が一、二八〇万八、六〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、法人税一、九〇五万三、〇〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)(括弧内の番号は証拠等関係カードにおける検察官請求証拠の番号を示す)

判示全事実について

一  被告人又永化工株式会社代理人兼被告人堀江光平の当公判廷における供述

一  第一回公判調書中の被告人又永化工株式会社代理人兼被告人堀江光用の供述部分

一  被告人又永化工株式会社副社長兼被告人堀江光平の検察官に対する供述調書三通(八六ないし八八)

一  被告人又永化工株式会社取締役兼被告人堀江光平の大蔵事務官に対する質問てん末書一四通(七二ないし八五)

一  堀江光男、堀江龍平、吉栖照美及び宮川達郎の検察官に対する各供述調書(三六、五六ないし五八)

一  堀江光男、星田正嗣、山本豊、上野隆士(五通)、中嶋達(二通)、成瀬純子(二通)、本島文彦(三通)、比佐毅、奥田幸子、松本公則、土井欣子、笠井佐知子の大蔵事務官に対する各質問てん末書(三五、三七ないし五五)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書二六通(九ないし三四)

一  登記官作成の商業登記簿謄本一二通(五九ないし七〇)

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書及び証明書(二、五)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書及び証明書(三、六)

判示第三の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書及び証明書(四、七)

(法令の適用)

被告人堀江光平の判示各所為はいずれも法人税法一五九条一項に該当するので、各所定刑中いずれも懲役刑を選択することとし、以上は平成七年法律九一号附則二条により同法による改正前の刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内において同被告人を懲役一年六月に処し、また、被告人堀江光平の判示各所為は被告人又永化工株式会社の業務に関してなされたものであるから、被告人会社に対しては、法人税法一六四条一項により判示各罪につき同法一五九条一項の罰金刑が科せられるべきところ、いずれも情状により同法一五九条二項を適用し、以上は前記改正前の刑法四五条の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪の罰金の合算額の範囲内で罰金四、〇〇〇万円に処し、被告人堀江光平に対し同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。

(量刑の理由)

本件は、被告人会社の実質的経営者である被告人堀江光平が、被告人会社に関し、三事業年度にわたり法人税を過少申告することにより、合計一億三、三八一万円余りの法人税を免れた事案である。ほ脱額は右のとおり巨額であり、そのほ脱率も平均約七一・五パーセントと高率であるうえ、その犯行態様は、仮名ないし借名名義の預金口座を開設した上、複数の取引先に頼んでほ脱に協力させるなどして巧みに偽装工作をしていたものであって、その犯行は計画的かつ巧妙である。更に、犯行の動機は、接待交際費の不足や実父からの金の無心などに基づく自己中心的なものであって、酌量の余地はない。以上の事情にかんがみれば、犯情は悪質というほかなく、被告人の刑事責任は重いといわざるを得ない。

しかしながら、本件においては、違反に伴う修正本税、重加算税、延滞税等二億七、七六四万三、九〇〇円が既に納付済みであること、被告人は被告人会社の経理システムを不正ができないように改革し、二度とこのような犯罪に手を染めない旨誓い、深く反省していること等、被告人堀江に有利な事情もあるので、同被告人に対しては、その刑の執行を猶予することとした。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 被告人又永化工株式会社につき罰金四、〇〇〇万円、被告人堀江光平につき懲役一年六月)

(裁判長裁判官 寺田幸雄 裁判官 江藤正也 裁判官 中川綾子)

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